ファイト! / 中島みゆき #81
原曲収録:中島みゆき「予感」 (1983)
(管理人より)Twitterに「型に嵌めない歌い方が特徴の曲カバーした、 感情をガンガン揺さぶられる歌でした!」とコメントされていたので何だろうと思っていたら、完全に予想外! 今回はあの中島みゆきの名曲でした。この曲には有名なエピソードとして、中島みゆきがオールナイトニッポンのパーソナリティだった時代にリスナーのハガキから作られた、というのが知られています。またその後、CMで使用されてリバイバルヒットしたことも有名です。
さて最初に曲名をみた時に、あの曲をどうされるのかなあ・・・と正直不安半分期待半分でした。だって原曲は名曲、歌い手もシンガーとして天才的、さらにカバーもいっぱい(最近だと満島ひかりのがありますね)知られているのですから。私にもはっきりとしたイメージがすでにあります。で、その結果ですが・・・参りました。これはこの曲の別の解釈として、そして「がんばれなくなっちゃった」の作者ならではと言える、間違いなく有希乃さんだけの「ファイト!」になっていました。
実は最初に動画をみた時には今ひとつ有希乃さんが何をしたいかがわかりませんでした。最後に感情を爆発させるのかなあと思ったら、それもなかった。そこで2回目に画面をなくしてヘッドフォンで聴いてみたら・・・有希乃さんがやりたい表現が少しわかった気がしました。中島みゆきの原曲はひとつの世界として完結しています。どちらかというとお芝居的な激しい表現です。それに対して有希乃さんの今回のカバーは、とても静謐で優しい表現です。有希乃さんの今回の歌声はまるで肩にそっと手を置かれたような優しさがあります。 以前有希乃さんは「本当に元気が出ない時は音楽ですら聴く気にすらならないんじゃないか」とおっしゃっていましたが、私はそれが今回の有希乃さんの表現につながっていると思いました。 この曲で描かれた痛みを我が事のように感じながら(Youtubeのところに「どうしても涙がでてきたので沢山録り直しました! 」とありました)、でもそうは言ってもできない時もあるんだよ、と弱音を吐いてしまう部分をも受け入れるような穏やかさが決定的に他の方の表現と違うのです。他の方の表現は激しい分、インパクトは当然大きいです。しかしそうそう何度も聴きたいとは思わない。だからこの曲を必要としている人にとっては、実は有希乃さんの表現の方がすっと心に入ってくると思いました。何度も何度もリフレインされる「ファイト!」が、この有希乃さんの声だったら、この有希乃さんの歌い方だったら、誰かの心に届くのではないでしょうか。「別の人の彼女になったよ」の時のように感情剥き出しに歌われていたら、歌詞の上っ面をなぞっただけになっていたかもしれません。
なので、もし激しさを期待して物足りないと思った方がいらっしゃったら。ぜひヘッドフォンで聴いてみてください。今の私のように、 いつの間にか繰り返し聴いている、と思います。 そして有希乃さんの声で心がポッと温かくなったような気持ちになっているのではないでしょうか。